液胞アミノ酸トランスポーターの多様性と生理機能の
解明

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液胞にアミノ酸を取り込むメカニズム

 液胞膜に存在するV-ATPaseはATPを加水分解してプロトン(H+)を液胞内に取り込みます。 その結果液胞内外にプロトン濃度勾配が形成されます。 アミノ酸はプロトンとの対向輸送により取り込まれることが以前から知られていました。 我々は出芽酵母の液胞にアミノ酸を取り込むトランスポーターを3種同定し、 それぞれVba1、Vba2、Vba3と名付けました(図2A)。 これらは互いに類似したタンパク質であり(図2B)、 いずれも塩基性アミノ酸をプロトンとの対向輸送によって液胞へと取り込みます(図2C)。 しかし、これらVbaタンパク質以外にも液胞にアミノ酸を取り込むトランスポーターが存在するはずです。 この未知のトランスポーターを見つけることが私たちの研究課題です。

図2 Vbaタンパク質

A, Vba1は液胞膜に局在する。
B. Vba1、Vba2、Vba3は他の類似タンパク質とともにVBAファミリーとよばれる タンパク質グループを形成する。
C. Vba1によるプロトンとアミノ酸(His: ヒスチジン、Lys: リジン)の対向輸送。

液胞内のアミノ酸は必要に応じてサイトゾルへと排出される

 液胞は窒素源が枯渇するとオートファジー(図3)によって大規模なタンパク質分解を行います。 オートファジーではまずサイトゾル中のタンパク質を多量に含んだ二重膜の小胞(オートファゴソーム)が 細胞内に形成されます。オートファゴソームの外膜は液胞膜と融合し、 内膜で包まれた一重膜小胞(オートファジックボディ)が液胞内へと放出されます。 その後オートファジックボディは崩壊し、 その中のサイトゾルタンパク質は液胞内のプロテアーゼによって分解され、 最終的にアミノ酸を生じます。 このアミノ酸はサイトゾルへと排出され、タンパク質合成に再利用されると考えられています。 実際にオートファゴソームを形成できない変異体は窒素飢餓条件でのタンパク質合成が低下し、 生存率も著しく低下します。 オートファジーは酵母だけでなく真核生物全般に見られる現象で、 その重要な生理的役割が数多く報告されています。 例えば、動物では出生直後の栄養供給に必要であり、 オートファジー欠損マウスは正常に生まれますが、すぐに栄養不足に陥り死んでしまいます。 また植物では老化への関与が報告されています。

図3 オートファジー

A. オートファジープロセスの概略
B. 液胞内のタンパク質分解を阻害すると野生株 (左)ではオートファジックボディが蓄積する。
一方、オートファゴソームを形成できないatg 変異株(右)ではオートファジックボディの蓄積は見られない
C. オートファジックボディの電子顕微鏡像(写真提供:東京工業大学 大隅良典教授)

 オートファジーによるアミノ酸リサイクルには液胞からアミノ酸を排出するステップが当然必要です。 そこには液胞膜でアミノ酸を輸送するトランスポーターの存在が想定されます。 AVTファミリーと呼ばれるグループの中に、 液胞からアミノ酸を排出するトランスポーターが数種類報告されていますが(図4)、 他にも多くのトランスポーターが機能すると考えられます。 私たちは、ゲノム情報に基づいて、これらのトランスポーターを同定し、 その生理機能および細胞内分子動態を明らかにすることを目的に研究を進めています。

図4 Avt6は液胞膜に局在する

Avt6と緑色蛍光タンパク質(GFP)の融合タンパク質は液胞膜を特異的に染めるFM4-64と共局在する(Merge)。

植物の液胞アミノ酸トランスポーター

 植物では維管束系を経由したアミノ酸の循環が生活環の重要なプロセスであり(図5)、 種子発芽、生長期の転流、老化などに密接に関わることが知られています。 植物細胞内においてもアミノ酸は液胞などのオルガネラに蓄積されます。 私たちはシロイヌナズナなどに出芽酵母液胞アミノ酸トランスポーターのホモログ遺伝子の存在を把握しています。 その組織器官特異性などの解析を通じて植物個体が環境に適応する上でのこれらトランスポーターの働きを 明らかにしたいと考えています。 酵母細胞及びそこから単離した液胞膜小胞はその有用な解析系として利用されています。

図5 植物個体におけるアミノ酸の循環